2020.11.19

INTERVIEW Vol.3

ターザン AQZAWAエルドレッソ デザイナー

ウーフォスの別注サンダルをデザインしたターザン AQZAWAさんに、
ランニングのことを楽しく語ってもらいました

「地球を走る“アースランニングブランド”だって、勝手に言ってるんです。
ロード系とか、ジャンルを分けるようなことはしたくないなって」。

そう語るのは「ELDORESO」(エルドレッソ)のデザイナー、ターザンAQZAWA(アクザワ)さん。
ここではあえて、ランニングウェアブランドと言わせていただくが、
エルドレッソのウェアって、いわゆるスポーツメーカーのものと、まったく違っている。
マラソンやトレイルランニングにも対応できるほど機能的なのに、
ひと目でエルドレッソだとわかる主張のあるデザイン。
まさに唯一無二。作っている本人そのもの、というか。

そんなAQZAWAさんに、人生の最重要ライフワークであるランニングのことや、
ウーフォスとの新しい別注サンダルのことなど、いろいろ訊いてきました。

箱根駅伝を目指す学生ランナーだった

というわけで、AQZAWAさんを語る上ではランニング、つまり走ることを欠かすことはできない。
遡ること小学生の頃、校内のマラソン大会で好成績を収め、「俺、もしかして足速いのかも!?」と
勘違い(?)したことが、走ることを好きになるきっかけだったとか。

「高校時代は全国高校駅伝常連の強豪校で走っていました。
といっても入学早々にレベルの違いを思い知らされていきなり挫折するんですけどね。
だって1学年下の後輩には、後々オリンピックのフルマラソンで6位入賞するような選手がいる環境でしたから」。

それでも地道に練習して、スポーツ推薦で国士舘大学に進み、競技を続けていたAQZAWAさん。
学生スポーツの最高峰である、箱根駅伝を走る夢を持って練習に打ち込んでいた、はずだったのだが……。

「大学3年生のときに辞めちゃいました。理由は2つあって、まず自己ベストを出せたこと。
もう一つは『明らかに無理だな』とレベルの差を痛感したことです。
自分の中では練習も真面目にやっていたし、それなりに自信を持ってたんだけど、
強豪校の選手と試合で走るときに陸上競技場を1周、2周と周回遅れにされて、
『ああ、これはハートの問題じゃないな』と。自己ベストも出せたし、キッパリと、未練もなく」。

20歳で走ることから一旦遠ざかり、その後15年くらいは、まったく走る気にならなかったそう。
それでも、テレビでマラソンや駅伝の中継を観るのは変わらず好きだった。
けれど、「自分が走ろうとはならなかった」という。

走ることをやめてからは本人曰く、誘惑に負けて、酒や遊びに明け暮れていた。
アパレル会社やラブホテルでのアルバイトを始め、それから就職したり、ラブホテルのバイトに戻ったりを繰り返す日々。
そんな中、ひょんなことから友人たちと洋服のブランドを始めることとなる。

「僕自身がブランドを作りたかったわけじゃないんです。
友達がやっていて、一緒にやろうよって誘われたから始めた。
僕は基本、そういうスタンスなんです。
でも、いざやるとなるとけっこう真面目にやるタイプだから、最初はバンドみたいに4人でやっていたんですけど、
次第に方向性の違いみたいなのが出てきて(笑)。
で、最終的には一人になっちゃって、『アールディーズ』を始めるんです」。

「アールディーズ」とは、「エルドレッソ」よりも前にAQZAWAさんが立ち上げたアパレルブランド。
そのスタートが2004年だから、陸上競技を辞めてから8年が経過したことになる。
一体いつ、ナニがきっかけで再び走るようになったのか。

洋服作りの延長線上に再びランニングが現れた

「今から7、8年くらい前、山梨のランニングショップ『道がまっすぐ』の石川さんにトレランの大会に誘われたんです。
小さな大会だったんだけど、練習も何もせずに出たら全身筋肉痛になって、そんで泥んこになって、それが単純に面白いなあと。
で、石川さんが『道がまっすぐ』をオープンするときに『何かランニングのアイテムを作ってくれない』って頼まれたんです。

最初は断りましたよ。だって当時は僕、基本コットンの服しか作ってなかったから。
でも『いいんだよ、その方が面白くない?』って言ってくれたので、ランニングにはめちゃくちゃ適していない綿麻のキャップを作ったんです。
そしたらそれが想像以上に反響があった。
トレランの大会に出たときに『あの帽子作った人ですよね?』って声をかけられるっていう、ダイレクトな反応がすごかったんです。
これはちょっと面白いなということで、今後はちゃんと吸水速乾素材を使ってパンツを作ってみたら、これまた反応が良かった。
じゃあさらに10型くらい作ってみるか、という具合にラインナップが増えていった感じですね。
そうやって2016年にちゃんとブランドとして始めたのが『エルドレッソ』なんです」。

大会の会場でAQZAWAさんの作ったアイテムを目にしたトレイルランナーたちが導火線となって、
エルドレッソは徐々にランナーたちの間で注目される存在になっていく。
そんな流れに呼応するかのように、AQZAWAさん自身も「走ってちゃんと汗をかくのって、面白いなあ」と
ランニングが好きだった自分を思い出していく。

大好きなフルマラソンをキッカケにリカバリーサンダルと出合う

「今はもう毎日走っています。夜、仕事が終わってから最低10km。休みの日は15〜20km。
月間で300kmくらいかな。
オーディブル(朗読を聴いて本を楽しめるアプリ)で小説を聴いたり、仕事のことを考えたりしながら、
近所を1時間ぐらい走っているのが一番好きなんです。
あとフルマラソンも大好きなんですよ。特に地方の大会。
走り終わったらホテルに戻ってシャワー浴びてすぐ飲みに行けるでしょ。
で、ホテルに戻ってすぐ寝れて、翌朝のんびり帰れるのがいいんです」。

昨年は6回も大会に出場したというほどフルマラソン好きのAQZAWAさん。我らがウーフォスとの出合いも、フルマラソンがきっかけだった。

「2019年の7月に、ゴールドコーストマラソンに出たんですけど、
一緒に出た友人が会場のブースでリカバリーサンダルを買おうと思ってる、って言うんです。
『リカバリーサンダル?』ってそのとき初めてウーフォスを知ったんですけど、履いてみたらフワフワの感覚が気持ち良かった。
疲れた脚のプルプルなところを補ってくれるというか、とにかくラクだなーと。
で、面白いアイテムだなー、何かできないかなーって思ったんです」。

「OOahh Sport Designed by ELDORESO」。
「ウーフォス」の定番モデルのひとつ、「OOahh Sport」をベースに、
「エルドレッソ」の定番でもあるレオパード柄をあしらった一足で、
2020年初頭に発売されるやいなや、瞬く間に完売してしまうほどの人気を博したアイテムだ。

「OOahh Sport Designed by ELDORESO」(参考商品)

「ウーフォスのラインナップを見て、ステンシルっぽいデザインのものは元々あったんだけど、
僕がやるなら『もっともっと、どぎつくてキャッチーなものにしたいなあ』って。
ならばレオバードでしょ、ってことで、うん、あんまり深くは考えなかったですね(笑)」。

「時間をかけ過ぎると無難なものになってしまう」という信条から、デザインにはあまり時間をかけないようにしている。
「無駄に時間をかけないデザインの方が、エッジが残っていて良い」。
そんなスタンスも、AQZAWAさんらしい。

実はすでに、ウーフォスとの新しい別注サンダルの企画が動き出しているとか。
「アメリカではおなじみの『コンポジションノート』のグラフィックをイジって、
その上に“パッションのある”グラフィックを乗せた」と語るデザイン。

2021年3月発売予定の別注サンダル。その一部をちょっとだけ先行公開。
※写真はサンプルです。デザインは変更になる場合があります

サンプルを見た本人曰く、「凄くカッコよくできた」と今回も納得のご様子。
ウーフォスとエルドレッソのコラボサンダル第2弾は、2021年3月に発売予定とのこと。
コレは楽しみに待ちたい。

何かを始めときはいつも、まわりにいる誰かがキッカケ。
でも、やると決めたら真面目にやる。それが僕の基本スタンス。

ターザン AQZAWA(TARZAN AQZAWA)

1976年正月生まれ。群馬県出身。「エルドレッソ」のデザイナー兼オーナー。
学生時代から陸上競技に勤しみ、現在も年に複数回フルマラソンやトレイルランニングの大会に出場するほどのランニング好き。
自身でも「東京や地方で一般ランナーの人たちと一緒に楽しめるイベントをやってみたい」と画策中

  • Photo: Akane Watanabe
  • Edit&Text: Soichi Toyama

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