CROSSTALK Vol.6

キーワードは“周知と未知”。
木を使わずに自然を感じる空間づくりに込めた想い

大阪・北堀江に誕生したライフスタイルショップ「Fav_Our_Planet」。
ここではアルコインターナショナルの取り扱う
すべてのブランドの商品が取り揃えられているフラッグシップとも言える場所だ。
今回は2021年3月のオープンに際し、代表の降幡昌弘と、
造園家でありながら、空間ディレクションを数多く手がける松江大輔氏との対談の模様をお届けする。
ただモノを売るためだけにとどまらない新しいショップの在り方と、
そのための空間づくりのヒントが垣間見えた。
※以下、敬称略

「ありそうでなかった」ライフスタイルショップを目指して

まず「Fav_Our_Planet」のオープンに至った経緯から聞かせてください。

降幡/「Fav_Our_Planet」という店名は、もともとあった僕らの企業理念である「地球を楽しくする」を英語にしたもの。
その理念を体現するような場所をつくりたい。そんな想いがずっとありました。
アルコインターナショナルが扱っている商品は言わばモノなので、
それらとコトをつなげるような空間があればいいなと思っていたんです。

松江さんとは、自宅の庭の植栽をお願いしたことが出会いのキッカケでした。
僕らの商品を扱ってくれている卸先さんの店舗をはじめ、たくさんのお店がある中で、
それらと上手に差別化するにはどうすればいいのか。
そんな相談をしていた時に、「どうせやるなら、他にない店を作ったほうがいいんじゃないですか」
とアドバイスをいただきました。

降幡昌弘/アルコインターナショナル株式会社 代表取締役CEO。
トレイルランニングやスキーといったアクティブなスポーツを趣味とし、同社が取り扱うすべての商品を自らキュレーション、セレクトしている。

松江/友達と言ったら失礼になるかもしれませんが、本当に何気なく会話をしていた中で「今度お店を出すんです」と。
場所も僕自身にとって馴染みのある堀江だったので「ああ、あの場所か」みたいな感じでしたね。
その時はまだお仕事として契約もしていなかったので、単純に友人として
「どうせやるなら面白いものをつくった方がいいんじゃないですか」とお返事しました。

もう一つ伺ったのは「なぜ卸しをしている会社がお店をつくるんですか?」ということ。
すると「コロナになって、これまでのように頻繁に海外へ行って仕入れをするようなことが難しくなった今、
会社としても新しいことにチャレンジしたいんです」ということだったので、
それならやった方が絶対良いし、面白いんじゃないかと思いましたね。

松江大輔/造園家。株式会社IRODORIMIDORI代表取締役。
ショップやホテル、飲食店などさまざまな空間のアートディレクションを手掛けている。
週末は田舎暮らしを楽しむデュアラー

降幡/その時に松江さんからいただいたワードが“周知と未知”。
つまり「みんなが知ってそうで知らない」ということ。その言葉を聞いた時に、「コレだ」とピンとくるものがありました。
海外も含めていくつものお店を見てきた中で、普通の店を作っても、僕自身が飽きてしまうし、
お客さんにも「ああ、なんか新しいお店ができたんだな」程度で流されてしまう。
それではフラッグシップとしての意味合いがすごく薄いと感じたので、
“周知と未知”というキーワードがすごく興味深いと思ったんです。

京都に新しくできた「(THISIS)SHIZEN」というお店のグリーンを松江さんが手がけられているんですが、
それがまさに「世の中にありそうでなかった」だったので、この方なら僕たちが想像できないようなお店をつくってくれるんじゃないか、
という期待の中でお願いするに至ったわけです。

松江/世の中は周知なもので溢れていると思うんです。
例えば、もし僕が「Fav_Our_Planet」に関わらなかったとして、ここに新しいお店ができたとなった時、
それがどういう空間になるか、だいたい想像できてしまう。
木材を軸に構成されていて、随所にサスティナブルな素材を使っているような、ナチュラルテイストなアウトドアショップ、みたいな。
それが正解か不正解か、ということではなく、せっかく「地球を楽しくしよう」という企業理念を掲げる会社なのであれば、
ワクワクするような“未知”の要素を表現したほうがいいと思ったんです。

すごく平たく言うと、他のアウトドアやスポーツブランドが絶対にやらない見せ方。
自然を感じさせる=ナチュラルテイストに走りがちですけど、あえて真反対の「ソリッド」というキーワードを軸に、
色がなくて余白の多い、ちょっとギャラリーっぽい空間にしてみたらどうかなと。
そうすることで、商品の色が引き立たつし、色がノイズとして入ることで、面白い空間ができるんじゃないかと思いました。

結局、自然というのも、木があって植物があって苔があって、っていういろんな“ノイズ”の重なりだと。
ですから正式に依頼をいただいた時点で、木を使わずに、メタルやガラスのような工業製品をうまくミックスして、というアイデアはありましたね。
自然の新解釈というか、自然を感じさせるのに、必ず木がある必要はないと思っているんです。

心地良い空間を生み出す工夫

完成した店舗を見て、いかがでしたか?

降幡/こうして実際にできあがったものを見て、本当によくできているお店だなと痛感しています。
ほとんど木を使ってないのに不思議と自然を感じられる空間になっているなと。

外から吹いてくる風だったり、光だったり、そういうものを最大限利用しながら、時間帯や天気によって、空間の表情が変わる。
レイアウトされた什器でできる影とか、金属やガラスに反射する光なんかでも自然を感じられる。
本当に面白いなあと思っています。

松江/立地的に光がけっこう入って来る場所であることはわかっていたので、什器にメタルを使うことで、
それに光が乱反射すると絶対に気持ち良いし、過度な照明はつけずとも、自然の光で明るさは十分確保できるだろうなと。

「自然の良さって何?」って聞かれたら、心地良いっていうのがあるじゃないですか。
だから木や植物がなくても、風とか光で心地良いと感じられる空間であればそれも“自然”だと思うんです。

それに店のつくりとして開放感があることが自然を感じられる理由の一つだと思います。
余談ですが、京都のお店って、間口が狭いけど、入ったら奥行きがあるっていうのが特徴としてあるんです。
そこで働いている人やその店自体にも歴史があって、店のつくりと同じように奥深いんです。
僕の中で「Fav_Our_Planet」をそういうお店にしたかった。

モノとコトをつなげ、人々の暮らしを豊かにする

ECビジネスが活況な今、あえて実店舗をオープンさせた狙いは何でしょう?

降幡/オンラインにはオンラインの、実店舗は実店舗の役割があって、それぞれの機能をしっかり分けて考えるべきだと思うんです。
ワンクリックで簡単にモノが買える時代なんだけど、あえて店を訪れたり、そこで会話をするという体験によって、
人との繋がりや関係値ができていく。

そもそもモノを売るということも、「Fav_Our_Planet」の役割の一つに過ぎないんです。
例えば、この場所を使ってランニングイベントがあってもいいし、作家さんやアーティストさんがギャラリーとして使ってもいい。
他にもトークイベントをしたり、ムービーを流したり、いろいろなことがこの箱を通して起きていったら面白いなと。

ですから、さまざまな状況に合わせて変化していけるようなお店でありたいですよね。
僕らが扱う商品は、「ランニングするための靴」「トレーニングするための服」「サーフィンするためのタオル」というように、
モノとコトが絶対につながっているんですよ。
モノだけを提供しても、コトがないと何も始まらない。
だから「Fav_Our_Planet」では、モノとコトを合わせて表現したいなと思っています。

2階にコンディションニングジムを併設していることもその一環です。
スポーツに関するモノが多いので、「体を整える」というコトは一番お店にマッチするのではないかと思っています。
お店で商品を見るのと同時に、上にジムがあることで「体を動かしてみようかな」という動機付けになったらいいですよね。
世の中では「心身共に健康に」なんて言われていますけど、特に心の部分が疲れている人がたくさんいると思います。
そんな人がこの店に来て、フーッと深呼吸できるような空間になっていけたら嬉しいですね。

松江/コロナが落ち着いたら、降幡さんはまた海外へ出かけて、新しいモノも見つけてこられるでしょうから、
これが「Fav_Our_Planet」の完成形ではないと思っています。
空間をつくる上で、意識的に“余白”をたくさん残してあるので、そこに置く商品が変われば、見え方もまた変わってくるんじゃないかな。

この先お店がだんだんと認知されていけば、先ほどおっしゃっていたようなさまざまな取り組みもできるでしょうし、
こういう場所ができたことで降幡さんご自身の中に違うチャンネルが生まれてくるんじゃないかと思います。

降幡/松江さんがおっしゃるように、まだ完成してないんですよ。
「もっとこの店に合うモノを」というように仕入れの視点も変わるでしょうし、
僕自身が「Fav_Our_Planet」の成長を楽しみたいと思っているんです。

本社からも近いので、社員が店を訪れて、自社の扱う商品により愛着を感じてもらえたり、
健康への意識が高まったり、さまざまな副作用が生まれてくることも期待しています。
会社と共に成長して、多くの人に楽しんでもらえる、そんなお店として育てていきたいですね。

【SHOP DATA】
「Fav_Our_Planet」

大阪府大阪市西区北堀江1-3-12
[1F/SHOP&GALLERY]
12:00-20:00
11:00-20:00(土・日・祝)
[2F/CONDITIONING GYM]
10:00-20:00
月曜定休

  • Photo:Akane Watanabe
  • Edit&Text:Soichi Toyama

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