2024.1.26

INTERVIEW Vol.28(後編)

「ビーチをきれいに。諦めることを諦めたくない」

趣味のサーフィンの繋がりから、昨年(2023年)11月23日に
種子島でビーチクリーンイベント「SAVE THE SEED」を企画したラジオDJのnicoさん。
イベントを通じて見えてきたこと、感じたこととは?
この記事を読んでいるみなさん。
ゴミ問題が他人事になっていませんか?
(前編はこちら)

「SAVE THE SEED」の開催当日の模様はいかがでしたか?

nico/まず多くの人が協力と参加してくれたことに感謝しています。
種子島の兄貴(笑)高田健剛さんをはじめ、ABEMAのサーフィン中継時に、
僕の横で解説者としてご一緒させてもらったJPSA2019グランドチャンピオンで種子島育ちの須田那月さん、
弟でプロサーファーの須田喬士郎さん、種子島在住のボディボーダーの岡澤未來さんらに協力をいただき、
島内のサーファーに加えて地域住民の皆さんにも参加いただきました。
そして10名を超えるJAXAの職員の皆さんも。
総勢80名以上の人が竹崎海岸に集まり、1時間みっちりと漂流物などのゴミを回収。
その総量なんと300kgにも上りました。軽トラック2台の荷台がぎっしり埋まる量。
参加した全員が協力しあいながら楽しそうにゴミ拾いをしてくれました。
各々がゴミに関する意見や気づきを語り合っているのも印象的でした。
そして11月なのに夏みたいに暑かったことも、いい思い出。
この活動をサポートしていただいているハイドロフラスクのボトルが想像以上に活躍してくれました。

そして東京から参加したサーフィンを趣味にするwebメディアの代表や元ファッション誌編集長、
そしてプロサーファーでフィルマーの和光大さんらは、イベントの事前告知やスタッフTシャツの作成、
写真撮影などを手弁当でバックアップしてくれました。
みんな「種子島でサーフィンしたい」と自費で参加してくれたんです。
ゴミ拾いのあと、地元の子供たちに海の楽しさとカッコ良さを知ってもらうための
サーフィンとボディボードのエキシビションをコンパクトに開催。
僕は拡声器でMCを務めさせてもらいました(笑)。

エキシビションのオープニングトーク。
写真右より和光大プロ、須田喬士郎プロ、岡澤未來選手、須田那月さん、nicoさん。
「21 oz Standard Mouth」REFILL FOR GOOD COLLECTION

種子島をビーチクリーンしてみて気づきはありましたか?

nico/回収したゴミに顕著な傾向があることです。
まず圧倒的にプラスチックをはじめとする石油由来のものが多いこと。
発泡スチロールケースやトレイなどの業務用器。魚網やブイなどの漁具。
日本以外の言語表記の日用品(洗剤など)の容器やペットボトルが多いのは、種子島の地理と海流が要因しているのでしょう。
そして拾っても拾っても減らないマイクロプラスチック。
2050年に、魚よりプラスチックゴミのほうが多くなる、いわゆる「海洋プラスチック問題」を目の当たりにしました。
ほかには薬品瓶などの医療廃棄物。そして飲料のビン缶類も多かったですね。
遠目では美しい景色ですが、ビーチを歩くと漂流物が本当に多かったです。

回収したゴミはどうされたのですか?

nico/御宿でのビーチクリーンでは回収したゴミを指定場所に集めて、あとは自治体が処分してくれます。
しかし種子島では前述したとおり、運搬費用や処理費用が発生してしまう。
そこで、参加者が所有する軽トラックをお借りしてリサイクルセンター(≒ゴミ処分場)まで自分たちで運搬しました。
そして焼却処分の可否、リサイクルの可否などに従って品種ごとに細かく選別する作業も。
瓶や缶、ペットボトル容器に中身があるものは空にしなければならない。
そこには得体のしれない液体や強烈な悪臭を放つものもある大変な作業で。
「リサイクル」「分別」に対する意識が大きく変わります。
飲みかけのペットボトルをそのまま捨てずにラベルを剥がして中身を空にしてから捨てようとか、
小さなことから意識改革をしなければならないな、って。
そしてリサイクルセンターにゴミを持ち込む際には、あらかじめ洗浄しておかなければならない決まりなので、
ビーチクリーンのあと参加者の皆さんが能動的に洗浄作業をしてくれました。
ビーチへの漂流物は砂や泥にまみれているから手間と時間がかかる。
そしてここでも気づきがあって、
マイクロプラスチックは洗浄中にネットやカゴの隙間から流れ出て、ふたたび海やビーチに戻ってしまう。
小さくて目立たないゴミだけれど、やっかいです。

この「SAVE THE SEED」は続きますか?

nico/続けたいし、続けないと意味がないと思っています。
でもビーチクリーンって限定的な行為だと思うし、海岸のゴミ問題の根本的な解決にはつながらないはず。
ましてやビジターである僕が声を上げて、どこまで効果があるのだろうと思う気持ちもある。
では意味がないかと言われたら、そうでないと思いたい。
ビーチクリーンを継続することで、少なくともゴミに対する意識は変わる。
諦めることを諦めたくないんです。
「ゴミ処分=行政サービス」「ビーチのゴミは自分には関係ない」、
そういった意識を捨て、ひとりひとりが責任を持って向き合いたい。
って、よそ者の僕が思うのは、やはり種子島でサーフィンしたときの感動が今あって、
よりきれいで魅力的なビーチになってほしい。おせっかいな気持ち(笑)。
僕たちはいい波でサーフィンをさせてもらって、島の人たちといいリレーションが築けて、
そして僕たちが島を訪れたあとはビーチがきれいになっている。
島のみなさんが、「よそ者ばかりにまかせてられん!」ってなったら、
みんながハッピーで正のスパイラルが生まれるよなって。

そしてサーファーはもちろんですが、そうでない人たちにも興味を持ってもらえたらいいなと思っています。
例えば、沖縄や奄美大島、種子島の隣、屋久島といった島々はさまざまなツーリストが訪れているように、
種子島のいろいろな魅力を伝えていきたい。
すいません、本当におせっかいで(笑)。
あと、この運動を、ただのボランティアではない仕組みにしたいんです。
幸いにも「地球を、たのしくする。」を理念に掲げるアルコインターナショナルさんがこの活動に賛同してサポートしていただけました。
今は人々の善意の上に成り立っていますが、
ビーチクリーンやゴミ拾いが何かのインセンティブになるような仕組みができたらいいなとも考えています。
そうすれば、活動がサステナブルなものになって、もっと大きなうねりになるはず。
それこそ島の人もツーリストも率先してゴミ拾いをしてメリットが生まれたら最高。
古くは鉄砲伝来、そして現在は宇宙開発といった時代の最先端が種子島にはある。
次は世界一の環境先進アイランドになったら素敵だと思っています。


nico

ラジオDJ、ナレーター。
J-WAVE 81.3FMの番組「Mornig Voyage」土・日曜のナビゲーター担当。
ラグジュアリーブランドやメディアなどのイベントMC、
JPSA、WSL、ISA、アダプティブのサーフコンテスト実況を務める。
NSA JUDGE CLASS B取得者。
https://www.instagram.com/nicostagramtokyo/

  • Photo:Dai Wako
  • Edit&Text:Toshiki Ebe(ebeWork)

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