INTERVIEW Sunny|マガジン|アルコ株式会社

「身体の動き」×「脳の働き」×「個性」という
独創的なトレーニングでサッカー界に新風を巻き起こす

スポーツに多様性が持ち込まれている。グループでの練習が当然と思われたサッカーのトレーニングにもパフォーマンスコーチのSunnyさんは“個”を持ち込んだ。プレーヤー個々の身体的な特性と向き合いながら“サッカーの動き”をブラッシュアップしていく「サニトレ」は、たとえ今は楽しさを見出せていなくても、新しい景色と出会える可能性はあるのだと教えてくれる。

パフォーマンスを上げてサッカーをもっと楽しむ

サッカーは、もっと楽しい。

パフォーマンスコーチ、Sunnyさんの存在はそう教えてくれる。彼が提唱する「サニトレ」は、個人の能力をひきあげるトレーニングメソッド。走るスピードを上げたい、対人能力を磨きたい、パスやシュートの精度を高めたいといった個々の求めに応じたトレーニングプログラムを提供している。

このプログラムが画期的なのは、フィットネス界でパーソナルトレーニングが浸透していったような変化を、チーム練習が主となるサッカー環境で実現したことだ。考えてみればフィジカルもパフォーマンスも各選手が持つ能力はそれぞれ。向上させたい要素が異なるのは自然なことで、多様なニーズに応えるメソッドに多様性が求められるのもごく自然なことだと言っていい。

そうしたサッカー選手に必要なパーソナルトレーニングを、プロではない選手も受けられる状況そのものに新しい風を感じる。潜在的ニーズがあったことは、2021年に本格スタートしたばかりながら、すでに30名ほどの選手、4チームと契約している状況にも現れている。それほど広く注目を集める「サニトレ」の最たる特徴は脳とサッカーを結びつけたメソッドであること。頭を使った学びを通して、明日のプレーを変えようというものだ。

「簡単にいえばサッカー選手にとっての身体能力を高めるトレーニングです。フィジカル主体の反復練習で身体能力を高めるのではなく、“身体の構造や動き”と“サッカーのための動き”に対する理解を深めて掛け合わせ、さらに選手それぞれの個性をプラスする。そうして選手個々のクオリティを向上させることに狙いを定めています。特にサッカーでは、11人それぞれがチーム内での役割を与えられる一方、そのポジションで強烈な個を発揮することも求められます。そのため個を尊重して行うトレーニングが必要になるのです」

たとえば3年ほど「サニトレ」を行っているWEリーグに所属するAC長野パルセイロの成田恵理選手は、それ以前の所属チームではベンチ入りすら果たせずにいた。Sunnyさんは「技術もフィジカルもトップ選手に及んでいなかった」ことを要因とし、一方で突破力とシュート力に秀でた才能を見出したことから、徹底的にスピードを身につけ、方向転換する力を高めるトレーニングを施した。その結果、今ではチーム戦術の中でスピード突破を求められる選手になったという。いわば個々と深く向き合うことでそれぞれのパフォーマンスを引き上げる「サニトレ」は、“その選手にとっての新しいサッカー”へ導く先導者なのである。

身体の動きを熟知する理学療法士としての見地から“サッカーの動き”を分析し、トレーニングメソッドへ落とし込む

非常にロジカルなメソッドであることも特徴だ。トレーニング中は選手に考えさせ続け、だからトレーニングを終えると、「頭が疲れた」という言葉が選手の口からもれる。それほどまでに頭を使うのは、ほぼ無意識下でのアクションが求められる試合の中で思考と行動の連動を最速化させるため。そして、このアプローチこそが「サニトレ」の真骨頂。“脳の働き”と“身体の動き”を熟知する専門家としてのキャリアを持つSunnyさんだから可能となるメソッドなのである。

「パフォーマンスコーチとして独立する前には理学療法士として自費診療施設に勤務していました。仕事は脳梗塞を患った方のリハビリで、機能不全に陥った脳内の回路を健全にするためのものでした。そもそも脳の働きがあって身体は動きます。たとえば脳内の疾患を理由に肘をまっすぐ伸ばせずにいる状態は、肘がまっすぐに伸びている状態を“脳が感知できない”ために起きているのです。そこで目を閉じてもらって理学療法士が腕をまっすぐにし、『どうなっていますか?』と質問するリバビリを行います。初めは『手が鼻の前にある』などと言うのですが、それは身体の動きを脳がきちんと認識できていないから。同様のリハビリを繰り返し行うことで徐々に徐々に認識のズレを正していくのです」

このときの“脳の働きと身体の動きをつなぐ”仕事に携わった経験が、パフォーマンスコーチの礎になっている。3年にわたってリハビリ施設で勤務していたSunnyさんは、いつの頃か「自分の意識と実際の行動にズレが生まれている現象がスポーツの世界でも行われているのではないか」と思うように。そしてサッカー界を代表するトップ選手たちのプレーを分析しはじめた。やがて、「なるほど、だからこの選手は速いのか」といった、その選手ならではの個性的なプレー(=“サッカーの動き”)を“身体の動き”を軸にしながら理解するようになる。その蓄積が「サニトレ」の核なのである。

トップ選手たちの“サッカーの動き”を分析して生まれたトレーニングメソッドは500を超え、今もってアップデート中だ。選手と一緒に汗をかいている最中に「あ、そういうことか!」とSunnyさん自身が気づくことも少なくない。世界のサッカーは進化を続け、選手の進化も止まらない。個性を活かしながら優れた“サッカーの動き”を身につけその選手ならではのプレーを導き出す「サニトレ」にも、だから終わりはないのだ。

10年ぶりに現役復帰!自らが先頭に立ってサッカーの新しい楽しさを追い求める

終わりがないのは、Sunnyさんのチャレンジも同様だ。理学療法士としてリバビリ施設に勤めていた会社員時代に職務上の観点から好きなサッカーについてTwitterやNoteで発信したらバズリ、SNSなどからコーチのオファーが舞い込むことに。そして一念発起してパフォーマンスコーチとして起業。これらはすべて、ここ数年の間に起きたことだ。

「非常に現代的な生き方を歩んでおります」と自嘲気味に言うが、当初、パフォーマンスコーチに高いニーズがあるとは思っていなかった。「だから当初はトレーニングを教えるという立場をとっていました。でも意外とニーズがありましたね。パフォーマスコーチと名乗り始めたのは、純粋に選手から技術を教えてほしいというオファーを頂いた去年あたりからなんです」

一歩を踏み出したからこそ知る、想定から外れたリアル。サッカー界でパフォーマンスコーチが成立する今という時代に関して、「世の中に認められれば好きなことをして良い時代。自分の正義を貫いて良い時代なのかもしれないですね」と言ったSunnyさんの人生模様はさらなる加速を見せる。昨年には10年ぶりに現役復帰し社会人サッカークラブ「横浜猛蹴FC」の一員として関東サッカーリーグ2部を戦い、今年からは東京ヴェルディeスポーツシブヤにも所属。新しくスタートしたYouTube発のサッカーリーグ「ReelZ LEAGUE」を舞台とする。

選手としてはチームのために戦いながら自己を証明する挑戦にのぞみ、選手を支えるパフォーマンスコーチとしての高みも目指す。前者の目標はレギュラー奪取とリーグ優勝であり、後者のそれは日本サッカー男子代表の選手をコーチングすること。カナダ・メキシコ・アメリカの共催となる2026年W杯まで3年と少し。はたしてピッチに「サニトレ」信奉者はいるのか?その挑戦はSunyさんにとっての、サッカーの新しい楽しさなのである。

Photo: Kazuki Okamoto(ONELIFE)MODEL : Eri Narita(AC Nagano Parciero Ladies)Edit&Text: Takashi Osanai