14歳からプロサーファーとして活躍してきた松田詩野さん。今回は改めて、プロを目指したきっかけや現在の活動、そして今後の目標についてうかがいます。
サーフィンと徹底的に向き合いながらも、サーフィンを楽しむマインドを決して忘れない。そしてプロサーファーとして、またひとりの人間として成長を続けていけたいという誠実な思いを聞くことができました。

オリンピックを経て「より上を目指す」気持ちに
──湘南・茅ヶ崎で生まれ育ち、現在では(2020東京オリンピックのサーフィン競技の会場にもなった)千葉・一宮にも拠点を置いているそうですね。
小さいころから毎週末、家族で茅ヶ崎の海に遊びに行っていました。そのなかでサーフィンに出会い、スクールに入って、毎週末練習していました。そのうちに大会に出るようになり、平日の学校の前後にも練習をするようになりました。
今は茅ヶ崎と一宮の2拠点で過ごしていて、一宮で暮らし始めたのは1年ほど前からです。海外の大会に出て帰国したとき、湘南では、1週間くらい波がないこともあるんです。日本でも安定して練習できる環境を求めて、波がコンスタントにある千葉にも拠点を置きました。


──プロを目指したきっかけを教えてください。
幼いころは、プロという資格はあまり意識していませんでした。でも海外のガールズサーファーの映像を見るようになって、「自分も海外でサーフトリップをしてみたい。海外の大会に行っていろんな国の波に乗ってみたい」と思ったのがプロを目指したきっかけです。多くの大会に出るようになって、勝ったときの感覚がすごく好きだったことも、ひとつの理由だと思います。

──プロとして活躍を続けて10年が経ちました。現在の、競技者としての目標は?
今年は、ツアーランキング1位でシーズンを終えることを目標にしています。そのためには自分のスキルを磨くことはもちろん、アジア、ヨーロッパ、ブラジル、オーストラリアといった“世界の波”に対応していく必要があります。遠征が増える分リカバリーも重要になるので、Hypericeを活用しながら、ケアとトレーニングのバランスをうまく作っていきたいですね。
──ツアー以外に、オリンピックでのサーフィンついてはどう捉えていますか。
2024年にパリでオリンピックを経験したことは、自分の中でもすごく自信になっています。舞台の大きさを実感したというか。もちろん2028年のロサンゼルスオリンピックも、目指している舞台のひとつです。
思い返せばオリンピックは、「より上を目指そう」という気持ちが芽生えた場所でもありました。うまくいかなかった悔しさを、前へ進む力に変える。それは今、自分の強みにもなっていると思います。


──競技としてのサーフィンと、ライフスタイルとしてのサーフィン。この2つをどう区別しているのでしょうか。
サーフィンのセッションはおおむね、次の大会を意識した練習内容にしています。でも「今日はただ楽しもう」「波と板のフィーリングを感じよう」というセッションもあります。特に地元に帰って友だちと入ったりすると、本当に純粋にサーフィンを楽しめますね。
競技スポーツとして取り組んでいますが、やっぱり私にとってサーフィンはあくまでライフスタイルの一部なんです。いずれにしても好きなことを仕事にできているのは、とても幸せなことだと感じています。
自分自身をいたわることが大事
──今やサーフィン以外のフィールドでも、憧れの存在として注目を浴びていますね。
ありがとうございます。でも自分も女性アスリートたちに憧れ、とても刺激を受けているんです。最近だと、冬のオリンピック(ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック)で活躍したフィギュアスケートのアリサ・リュウ選手や、フリースタイルスキーのアイリーン・グー選手です。
彼女たちのインタビューを聞いていると、目標に向かって一生懸命に取り組んでいることが伝わってきます。そしてSNSからは、普段のファッションや生活自体を心から楽しんでいる様子が見てとれます。実際にメダルを取って結果を残しながら、ライフスタイルも輝いている。周りに流されることなく自分の軸を持っている女性には本当に憧れるし、尊敬します。
──松田さんもファッションがお好きですよね。やはりご自身のSNSから、そんな雰囲気がうかがえます。
はい、ファッションもヘアメイクも、すごく好きです。海に入っている自分とはまた違った自分に出会える気がして。ファッションの情報は雑誌や、Pinterestをチェックすることが多いですね。
サーフィンの時間とライフスタイルを楽しむ時間のバランスが大事だと思うんです。そのバランスをしっかりキープできていると、自分自身のメンタルも安定しますから。

──女性アスリートはその美しさにフォーカスされるケースが多々あります。松田さんにとって、「美しさ」とはいったい何だと思いますか。
私が思う美しさは、内側からにじみ出るものだと思っています。目標に向かって進む過程で得られるものが、自分の美しさを作り上げていくのかなと感じています。
もちろんセルフケアや食事、睡眠といった生活習慣にも気を配る必要があります。ひと言で言えば「自分自身をいたわること」がとても大事です。
食事は、もともとヘルシーなものが好きなんです。フルーツやヨーグルトボウル、サラダも入れる野菜を変えたりして、自分で工夫して作ることが多いですね。でも海外から帰ってきた直後はすき焼き、焼肉、ラーメンといった日本らしいものを食べたくなります(笑)。
──「自分自身をいたわること」は、今の時代のとても大事なキーワードだと思います。ファッションやヘアメイクのほかに、松田さんが楽しんでいるものがありましたらぜひ教えてください。
アロマオイルを持ち歩いています。ブランドは特に決めていませんが、最近はドテラのものを使うことが多いです。
海外に遠征したときも、お店で気に入った香りを見つけたら購入することもありますね。それが良い思い出にもなりますし。お風呂に入れて楽しんだり、ロールオンタイプのものをそのまま肌に塗ったり。
遠征は試合期間が1週間あって、その前の週から現地入りすることが多いんです。最低でも2週間ほど海外にいるので、その間のリラックスアイテムとしても役立っています。
──最後に、今のサーフシーンについての思いと、ご自身の未来像を聞かせてください。
自分がサーフィンを始めた当時よりも、ガールズサーファーはずいぶん増えてきました。それはとてもポジティブなことだと感じています。大会に出てレベルアップを目指してもいいですし、プロではなくフリーサーファーのような道に進んでもいい。さまざまな選択肢がありますが、いちばん大事なのは「サーフィンを楽しむこと」です。
私自身、海外のすごくきれいな場所でサーフィンができているときなどは、「サーフィンをやっていて本当に良かった」と思うんです。そんな場所で夢を追いかけていること自体が、すごく幸せだなって。
これから先も、海の近くに住んでサーフィンをするというスタイルはまったく変わらないと思います。世界のトップで活躍するサーファーになっていきたいですし、その活動のなかで、いろんな国でのサーフトリップを楽しんでいきたいですね。そしてその延長線上で、サーフィンの魅力をいろんな形で発信していければと思っています。

Photo: Kenyu Takahashi Text: Tomoshige Kase Edit: Toshiki Ebe(ebeWork)
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