2024.2.16

INTERVIEW Vol.29(前編)

笑顔でまっすぐ金メダルへ進め!

かがみゆうか、と読みます。
難しい読み方の名前ですが、数カ月後には誰もが知る名前になっているはず。
レスリング女子76kg級、鏡優翔選手。
来る7月に開催されるパリオリンピックに、日本代表として出場が内定しています。
間違いなく世界トップクラスのアスリートのひとり。
そして同時に、お洒落やおいしいものが大好きな、ごく普通の22歳でもありました。

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レスリングノートに書いた夢

2月の少し暖かい日。鏡選手はマウンテンバイクに乗ってやってきた。
メリハリある配色のコトパクシのリュックを背負って、アンクル丈のTopo Athletic®(トポアスレチック)のシューズを履いて。
「家、めっちゃ近いんですよ!」。

「TRAILVENTURE 2 WP」

待ち合わせたのは東洋大学総合スポーツセンター。
同大学の学生である鏡選手は4年間、このスポーツセンターでトレーニングを積んできました。
今年3月に卒業し、4月からはサントリーに所属します。

「でも、就職後もここで練習できるんですよ。
サントリーさんがOKしてくれたので。これからはレスリングが仕事です」

76kgは女子の最重量級ですが、出会ったときの鏡選手は、そこまで体重があるように見えませんでした。
70kgすら届くかな?というイメージ。

でも、トレーニングルームで彼女を見て納得しました。身体が大きい。
そしてただ大きいだけの見せかけの筋肉じゃないことは、素人が見てもわかります。

「ウエイトトレーニングは午前中、週3日。
筋肉はつきやすいほうですし、レスラーとしてわりと身長も高い(167cm)ですし。
自分でも身体には恵まれてるなあ、と思います」

「ST-5 Black/Grey」

レスリングとの出会いは、生まれ故郷の山形県から栃木県に転居した小学校1年生のとき。
父がレスリング経験者ということもあり、兄とともにレスリングクラブに通いました。

「格闘技なんて本当にムリ!という感じで、最初は行きたくなかったです。
でもチームメイトの家に遊びにいったとき、部屋にトロフィーとメダルが飾ってあって。
『これ欲しい! これがもらえるならレスリングやる!』と思っちゃったんですよね」

その当時のレスリングノートにさっそく「夢はオリンピック」と書いたそう。
「小さい頃から大きく語るタイプで(笑)」。
以来現在までまっすぐに、レスリングの道を歩んできました。

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エリートのターニングポイント

ひと言で言えば、鏡選手はレスリングのエリートです。
小学校時代は全国大会で5度優勝。中学時代の優勝は1回でしたが、高校ではインターハイ3連覇を果たしています。

「中学3年生で(JOC)エリートアカデミーに入って、ナショナルトレーニングセンターで寮生活を始めました。
はい、ここから歩いてすぐの“トレセン”です。高校は推薦で帝京高校へ。
帝京もめちゃ近いんですよ。上京してからずっとこの辺りで過ごしています(笑)」

上京した中学3年のときに「夢だったオリンピックが明確な目標に変わった」のだとか。
高校2年生で日本代表入り。
2020年(実際はコロナ禍により1年延期)の東京オリンピック代表が、現実的に見えてきました。

でも結果的には、オリンピック代表はかないませんでした。
悔しさと同時に、何かが足りなかったのだと鏡選手は振り返ります。

「東京オリンピックは、いろんな意味でターニングポイントでした。
なぜ代表に入れなかったのか。
体力的、技術的なこと以上に、何が何でも出場する、という気持ちが足りなかったんです。
そのときオリンピックはもう夢ではなかったけど、
どこかでオリンピックに“挑戦する”イメージがありました。
それでは、ダメなんですよね」

ただ裏を返せば、東京オリンピックを逃したことが、
鏡選手をもう一段階上のレベルへと引き上げたのかもしれません。
東洋大学に進み、3年生のときに全日本選抜選手権で優勝。
初出場の世界選手権で3位、銅メダルを獲得しました。

そして昨年の世界選手権でついに優勝を果たし、世界一に。
女子の重量級世界一は、2003年の浜口京子選手以来、20年ぶりの快挙でした。

「22歳の今が、レスリング選手として最も充実していると感じています。
自分で言うのも何ですけど(笑)。
そしてレスリングを始めて以来、今がいちばん楽しいんです」

夢でも挑戦でもなく、必ず獲る

オリンピックに出場するようなアスリートは、心も身体もレベルが違う。
話を聞くたびに驚くばかりですが、実はもっと驚かされるのは、
鏡選手の明るく大らかな性格と、いい意味で普通すぎる22歳の素顔です。

「カラオケはあいみょんです。90点出しますよ」
「牡蠣とか白子ポン酢とか幸せすぎますよね。お酒も大好きです(笑)」
「KATEのリップモンスターは神。常時5本くらい持ってます」。

今回はレスリング選手としてのインタビューのほかに、他愛のない質問をもたくさんぶつけてみました。
好きな食べ物は? 登録しているYouTubeチャンネルは? 10年後の夢は?
(その答えはアルコインンターナショナル公式インスタグラムをチェックしてみてください)

朗らかに、ときには大笑いしながら、インタビューとたくさんの質問に応じてくれた鏡選手。
同じく彼女のSNSも笑顔に溢れていますので、ぜひ一度チェックしてみてください

最後に改めて、パリオリンピックでの目標を。

「必ず金メダルを獲ります。自分の強みであるスピードとタックルを活かして。
まだ誰も成し遂げていない女子重量級の金メダルを、自分が最初に日本に持って帰ります」

(後編に続く)


鏡優翔

2001年、山形県生まれ。
小学1年生で栃木県へ転居。
栃木のレスリングクラブ「サンダーキッズ」時代に、
全国少年少女選手権で5度の優勝。中学3年生でJOCエリートアカデミーへ。
高校では2017~19年にインターハイ3連覇を達成する。
2019年の全日本選手権は68kg級で東京オリンピック代表を目指したが、初戦で敗退。
東洋大学に進み、76kg級に戻して2020年全日本選手権で優勝。
2023年9月に2度目の世界選手権へ。
数々の強豪選手を破り、初の世界一に輝いた。
https://www.instagram.com/yuuuuuuuuka_0914/
https://twitter.com/yuukagami0914

  • Photo:Kengo Shimizu
  • Text:Tomoshige Kase
  • Edit:Toshiki Ebe(ebeWork)

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