2024.6.21

INTERVIEW Vol.33(前編)

輝く笑顔と攻めのチアで連覇へ一直線!

チアリーディングの甲子園と言われるJAPAN CUPで
2001年度から9連続という快挙を含め、日本一に輝くこと23回。
目下、4連覇中と圧倒的な強さを誇る絶対王者、
箕面自由学園高等学校GOLDEN BEARS。

その練習風景を覗かせてもらうべく、体育館の扉を開けると
部員全員がチアの舞で出迎えてくれました。

息もつかせぬタンブリング、圧巻のスタンツ、眩しい笑顔。
全身全霊のパフォーマンスは
「来てくれてありがとう」「ようこそ!」
そんな言葉がリアルに聞こえてくるかのようでした。

「競技会場を夢の世界に」

技術の高さはもちろんですが
最大の武器は観客を魅了するキラキラした表情。
笑顔ひとつにもGOLDEN BEARSならではこだわりがあります。

昨年から、オリエンタルランドの振付師に指導を受け
観客一人ひとりと目を合わせて、
心からの笑顔を届ける大切さを学び、実践してきたという。

「ディズニーランドって本当に人を幸せな気持ちにしてくれますよね。
そんな演技を目指したんです」と井上綾香コーチ。

そして迎えた2023年のJAPAN CUP。
コロナ禍がひと段落ついたその舞台は、
4年ぶりに演技中の発声や観客からの歓声が解禁となりました。

「ベアーズが演技する2分30秒間だけは、
観客の皆さんを“競技会場”から“夢の世界”へ連れていこう!」と
心を一つにして舞台に上がった精鋭16人は
大会史上最高得点で、4連覇を成し遂げました。

「観てくださる方が喜んでいる姿を見たら
練習のときとは違う不思議な力が湧いてきて自然に笑顔になれました。
私たちもお客様から “何か”を貰っているんですよね」
と振り返る新キャプテンの高山智子さん。

一方、GOLDEN BEARSのパフォーマンスに
励まされる人も数知れず。
『本当に元気が出た』『落ち込んでいたけど救われた』
そんな声がよく届くそうです。
ときには涙しながら『ありがとう』と言う人も。

誰かを応援して励まし、また逆に励まされる。
それがチアの魅力なのかもしれません。

目標は昨年の自分たちを超えること

創部は1991年。チアではまったくの無名。
監督は競技経験なし。部員も未経験者ばかりの集まり。
それにも関わらずメキメキと力をつけ、
6年目にインターハイで初優勝。以降、快進撃を続けます。

「初めて決勝戦に駒を進めることができた1996年は
誰も私たちのことなど知りませんでした。
箕面(みのお)という漢字を読めず「どこの学校?」といった具合です。
胸に熊のデザインが入っていた当時のユニフォームに対して
『何これ?』というつぶやきも聞こえてきましたね(笑)」
創部時より部を率いてきた、名将・野田一江総監督はカラリと語ります。

が、その決勝の舞台で日本初の技を何度も成功させたのです。
一瞬にして変わる周囲の目の色。そして優勝校発表のコールで
全国に“箕面”の読み方とGOLDEN BEARSの存在を知らしめました。

野田監督は素人ながら「生徒たちを勝たせてあげたい」という一心で
本場・米国のチアリーディングのビデオを取り寄せて研究し、
生徒たちも未経験の技に果敢に挑戦した成果だったのです。

「素人だからこそ『こんな技は無理だ』と先入観を持たず
挑戦できたのかもしれませんね」(野田監督)

今もGOLDEN BEARSの根底にあるのは“挑戦の精神”。
5連覇への期待がかかる今の状況でも

「連覇を“守る”という発想に逃げてほしくありません。
常に過去の自分を超えようと挑戦し続けてほしい」(井上コーチ)

「プレッシャーに思い悩む時間がもったいない!
そんな暇があれば練習し、出来ていないことを改善したい」(高山キャプテン)

みんな、前だけを見つめています。

私たちは“ベアーズのおねえさん”

もう一つ、GOLDEN BEARSには先輩から後輩へと
代々引き継がれる“約束ごと”があります。

―子どもたちに夢を与える立場。その自覚を持ち行動すること。―

今やGOLDEN BEARSはチアを目指す子ども達にとって憧れの存在。
ジャージ姿でランニングすれば、箕面の子どもたちから
「あ、ベアーズのおねえさんだ!」
「高校生になったらベアーズに入るの」と声がかかります。

「『ベアーズの看板を背負っていることをいつも忘れないように』と
先輩たちから言われてきました。
感謝の気持ちを忘れず謙虚で、礼儀正しくあること。
特に挨拶は目を見て、笑顔で元気よく!」と高山キャプテン。

「だって、初対面で思ってもらいたいじゃないですか
『ベアーズのおねえさんたち、やっぱり素敵』って」。

(後編に続く)


箕面自由学園高等学校 GOLDEN BEARS(ゴールデンベアーズ)

1991年、箕面自由学園高等学校アメリカンフットボール部
「GOLDEN BEARS」内の活動としてチアリーダーを結成、
1994年にアメリカンフットボール部から独立し、創部。
音楽の非常勤講師であった野田一江が指導を引き受ける。
1996年に全日本高等学校チアリーディング選手権大会 (インターハイ) で初優勝を達成。
以来、チアリーディング日本選手権大会 (JAPAN CUP)を含む
各大会で輝かしい戦績を残している。

  • Photo:Kengo Shimizu
  • Text:Hiroshi Morohashi(LEMON SOUR, Inc.)
  • Edit:Toshiki Ebe(ebeWork)

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