2024.8.16

MAGAZINE Vol.35(前編)

最果てゆえ、守られてきた楽園を見て思うこと

目の前でザトウクジラが子どもに泳ぎ方を教え、
アシカが巨岩群でのんびり昼寝をする。
ここは北米大陸最果てのメキシコ西部にあるロスカボス。
原始の自然と野生動物が躍動する、ユネスコ世界自然遺産の場所。
トラベルライターとして僻地をめぐる仁田ときこが
北米のSDGs先進地で出逢った奇跡のような楽園と
現地で老若男女に親しまれているCotopaxiについて綴ります。

ここなら、私も野生動物になりたい!?

数ヶ月前、北米大陸最果てメキシコのロスカボスを旅しました。
そこは世界遺産のコルテス海(別名カリフォルニア湾)と太平洋が交わる場所。
全世界の海洋哺乳類の約4割ほどの種が生息する「残された楽園」で、
ロスカボスの街全体でその貴重な価値を理解しているのです。
それは、そこに暮らす人々がほぼ観光業に従事していて、
自分たちの生活が観光に支えられていることをわかっているからなのです。
とはいえ観光客がやみくもに増えることは望んでいない。
そうなることで「残された楽園」が失われることを危惧しているからです。
つまり経済的利益だけを追求するのはなく、環境とのバランスをどう取るべきか。
今や当たり前となったSDGsが謳われるずいぶん前からロスカボスは街ぐるみで考えているのです。

その好例となるのがザトウクジラにまつわる話。
ザトウクジラは出産のため、例年12月から4月にかけて
世界中からロスカボス近海に集まると言われています。

そこで出産を終えた母クジラが子に泳ぎ方を教え、
仲間との交流の方法も教えるそうです。元気に泳いだり、ときに海面を跳ねてみたり。
そんな光景を浜からも見られるのがロスカボスの魅力のひとつ。

そうした貴重な生態系守るため、
ホエールウォッチングを営むダイバーたちは仕事中(観光客を案内しているとき)でさえ
海ゴミを見つけるや必死に回収する姿に心を打たれました。
ちなみに、ロスカボス観光局長も海ゴミを拾うためにダイバーになったそうです。

自然界と距離感がいい若者たち

カカチラス山脈の裾のあるランチョ・カカチラスという場所は
見渡す限りサボテンと砂漠のエリア。
そこでは電気は太陽光発電だけでまかなっていて、日没後は月明かりしかない場所。
水は必要な分をバケツで運んで使う。
Wi-Fiもごく限られたスポットでしか使えない。
その“不便な“環境での時間をすごく楽しんでいたのが、
今っぽいオシャレな姿をした現地の若者たちでした。
そうした環境を我慢しているのではなく、逆に熟知して楽しんでいる。
「あぁ、これが次世代なんだなぁ」と妙に感心してしまったのでした(笑)。

「Batac 24L Backpack - Del Día」

そんなロスカボスで、見かけたのがCotopaxiを使っている人たち。
私も数年前から24Lのバックパックを愛用中。
さまざまな場所(ときには僻地も)を旅してずいぶん味が出てきたのですが、
ロスカボスの街角のカフェに入ったときに、店員さんから
「そのCotopaxiいい具合に使い込んでるね」と声をかけられたのです。
現地の人はCotopaxiのようにサステナブルな商品に敏感なようで、
それは街全体の意識の高さがあるからなのだろうなと思ったのです。
次はロスカボスの街の人たちにおすすめしてもらったアイテムを持って旅に出てみようかな。
それは何か? まだ内緒にしておこうと思います(笑)。

(後編に続く)


仁田ときこ

トラベルライター。
辺境の風習やカルチャー、伝統工芸についての執筆を行う。
民俗学を学び、世界の神話や
その土地に古くから根付いた祭祀にも造詣が深い。
近年では世界のSDGs事情や次世代のLGBTQについて
関心を寄せレポートを行なっている。
地方をめぐる目利きとして手仕事の作品を収集し、
百貨店などで催事を開くことも多く、
メーカーとアウトドア商品のコラボレーションにも取り組む。
https://www.instagram.com/tokikonitta/

  • Photo:Miho Kakuta Erina Takahashi
  • Text:Tokiko Nitta
  • Edit:Toshiki Ebe(ebeWork)

Magazine一覧