2025.03.21

INTERVIEW Vol.42(前編)

Hello Chris!
Nocs Provisions CEOインタビュー

スタイリッシュかつ本格派の工学製品ブランド
Nocs ProvisionsのCEOクリス・マクロイにオンラインインタビューを実施。
日本から約8400km離れたアメリカ・カリフォルニア州、
レイクタホ地方の標高2000mにある一軒家に住むクリスは、
シーズン真っ只中のパウダースノーを滑り倒したあとにインタビューに答えてくれた。
前編では、ブランドの成り立ちやこれまでのエピソードについて。

Standard Issue 8X25 Waterproof Binoculars

Q:まず、Nocsを始めようと思った理由を教えてくれるかな?

親友が音楽フェスティバルから帰ってきたとき、
双眼鏡があったらいいのにと話したのがきっかけ。
僕は、ほかの双眼鏡ブランドや製品をリサーチし始めたんだけれど、
それらは非常に単調で、製品内容もややわかりにくいものばかりだった。
サーフトリップや野生動物の観察、そのほかの楽しいことに使えるクールな双眼鏡が欲しくなってね。
僕が持っているカリフォルニア・アウトドアの価値観に合うブランドを目指して
製品をデザインする「アート・プロジェクト」としてNocsを始めたんだ。

Q:Chrisがひとりで始めたブランドなの?

僕は別の仕事をしていて、
その本業のあとにデザインプロジェクトとしてブランドを始めたんだ。
初期のプロトタイプ制作やデザインは親しい友人と一緒に行なっていたんだよ。
会社を設立することよりも、自分が誇りに思える製品を作ることが
当初の目的だったんだ。

Q:「双眼鏡」でビジネスをするって、不安じゃなかった?

バードウォッチング用の双眼鏡やハンティング用の双眼鏡と競合するのではなく、
サーフショップやライフスタイル・アウトドアショップで販売できるものを作ろうと考えていたから、
双眼鏡ビジネスに参入することに不安はなかった。
そのカテゴリーにまだ余白があるように思えたからね。
若い現代のナチュラリストにとって有意義な製品を作るという目標があったからさ。

Standard Issue 8X25 Waterproof Binoculars

Q:アウトドアにはたくさんのギアが必要だけれど、
なぜ光学製品にしようと思ったの?

光学製品は何世紀も前から存在し、
革新的な人たちがアウトドアアクティビティで使ってきたものだろ?
現代の若い人たちがアウトドア活動にふさわしい美的感覚にマッチする双眼鏡や双眼鏡ブランドが
なぜ存在しないのかという疑問があったんだ。
そんなアウトドア用光学製品をデザインすることで、
アラスカでの川下り、ノースショアでの波チェック、
バックパッキングやハイキングでの人里離れた場所での野生動物探しなど、
さまざまなアクティビティで僕たちの双眼鏡をはじめとした
光学機器が使用されるのを目の当たりにできると思ったんだ。

Q:20回の試作品を作ったと聞いたけれど、なぜそんなに回数を重ねたんだい?
難しかった点はどこだった?

製品の開発は、光学の世界から完全に離れたところからインスピレーションを得たんだ。
ヴィンテージのBMXのハンドルグリップ、モダンアート、現代的な素材といったものから。
それらを、光学機器に盛り込むデザインプロセスは挑戦的だったと思うよ。
前例がないアイテムだったから、
革新的で商業的にも成立する製品をデザインしなければならなかった。
そういう点でこのデザインはアートプロジェクトに近いものだったから、何度も試作したのさ。

難しさは、ジェット成形金型による凹凸の設計だね。
ジェット成形部品は均一に乾燥させる必要があるため、
3Dプリンターでサンプルを作るよりも格段に難しく、安定した量産に苦労したんだ。
製品を生産できるようになるまでには、
何カ月もの設計の繰り返しが必要だったね。

Field Tube 10x32

Q:製品の配色が個性的で素敵だね。どんなアイデアだったの?

僕は、カラフルでモダンなBluetoothスピーカーを作る会社を
2010年にカリフォルニアで友人と設立したキャリアがあるんだ。
とても退屈で、単調な見た目で、過度に技術的だったスピーカーを、
楽しいライフスタイル・ブランドに変えたくて。
これととてもよく似た手法を双眼鏡に応用したのがNocsだから、
製品に楽しい色を使うことは自然なことだよね。

Q:製品のデザインは、彫刻家のフランク・ステラにインスパイアされたと聞いたけれど。
その経緯を教えてくれるかな。

20代前半のころサンフランシスコに住んでいたとき、
シーズンパスを持っていて近代美術館(SFMOMA)に通っていたときにフランク・ステラに出会ったんだ。
双眼鏡をデザインすることになったとき、ヴィンテージのBMXのハンドルグリップとともに、
フランク・ステラのリトグラフの線画からインスピレーションを得たんだ。

Zoom Tube 8x32

Q:会社としてユニークな企画やアクティビティ、イベントはある?

バードウォッチングのイベントをもっと増やしたいと思っているんだ。
それはとても身近で、どんな環境でも行うことができるからね。
このようなバードウォッチング・イベントを開催することで、
多くの未経験者にそれがどのようなものかを知ってもらうことができるから。
なにより複雑で大掛かりな道具やトレーニングを必要としないのが、
バードウォッチングのいいところさ。

Q:これから作ってみたいプロダクトはある?

大胆なセンスを忘れずに工学製品を作り続けながら、
僕たちが描くライフスタイルを補完するアクセサリーやアパレルを作りたいと考えているよ。

Q:Nocsの目標とビジョンを教えてくれるかな?

Nocsのゴールは、現代のナチュラリストが自然とのつながりを大切にし、
好奇心を育み、自然界とのつながりを生み出すためのツールを作ること。
最終的には、自然界とのつながりを感じる人が増えれば増えるほど、
この非常に複雑な時代に、自然環境に対してより良い形で貢献し、
その維持や保全につながると信じている。
Nocsは、長持ちする製品を作り、プラスチックフリーのパッケージを使用することでCO₂排出量削減に務め、
人々が自然の中でいい存在感を発揮できる活動団体を支援しています。
それがブランドとしての責任なんだ。

後編では、双眼鏡に新しい価値を創造するNocsのCEO
クリス・マクロイのプライベートについて、いろいろ質問をしてみました!
ぜひお楽しみに。

(後編に続く)

  • Text&Edit:Toshiki Ebe(ebeWork)

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