INTERVIEW Vol.47_02 YUI HASEGAWA|マガジン|アルコ株式会社

2025.8.29

INTERVIEW Vol.47(後編)

身体作りに欠かせないトレーニングと食。
鈍感だからこそ、時に入念に

攻撃のタクトを振るいつつ、守備のフィルター役も担う。
チームの中軸として八面六臂の活躍を続ける長谷川唯選手は、
日ごろからどう身体をケアしているのでしょう。
愛用するギアの感想から、普段の食事に対する心がけまで。
リアルな事情を伺いました。
(前編はこちら)

「結局、ストレスなく生活するのが一番です」

所属クラブで過酷なシーズンを戦い、代表活動にも参加。
どちらかと言えば小柄な体格ゆえ、
ほとんどの局面で自分より大きな選手と相対します。
そんな長谷川選手にとって、身体のケアは何より大切。
ケガの予防にもさぞ神経質になるかと思いきや?

「ならないですね。トレーニングはしっかりしていますが、
海外だから意識や方法を変えたりはしていません。
私、自分の身体の変化にちょっと鈍感でして……。
敏感な人ほど『やらなきゃいけない』と思うことが多いようですが、
私はそうならない。
そのうえであまりケガもしないので、得な体質かもしれませんね」

なるほど。ではメンタル的な願掛けなど、試合前のルーティンは?

「そっちも、まったくないです。
私が知っているサッカー選手のなかで、
一番と言っていいくらい何も気にしてないタイプだと思います。
普段から美味しいご飯を食べて、甘いものも気にせず食べて。
太ったら考え直すかもしれませんが、
ありがたいことに体質的に太らない。
結局、ストレスなく生活するのが大切だと思います」

ある意味で羨ましいほどの“鈍感力”。
ただし、サポートを受けるHypericeは日ごろから愛用し、
その効果に全幅の信頼を寄せているようです。

「Normatec Premier」

「Vyper 3」

「Hypervolt 2 Pro」

「かなり以前から存在は知っていて、
チームが所有するHypericeのギアを使っていました。
特にお気に入りなのが、
Hypersphere Goという振動する小さなボール。
鈍感だからこそ気付きにくい筋肉の奥の方を刺激してくれるから、
確実にケガの予防になっていると思います。
Normatecシリーズは、試合後の必需品。
このリカバリーブーツはジムに置いてあるチームも多くて、
海外ではより頻繁に見かけますね」

2021年にイタリアのACミラン、
同年夏からはイングランドのウェストハム・ユナイテッド。
そして2022年から現在まではマンチェスター・シティと、
名だたる女子クラブに籍を置く長谷川選手。
そのなかで、意外な場面でも世界との差を感じたそう。

「外国の選手って、あまり試合前の準備をしないんです。
みんな直前までロッカー前に座ったまま、
スマホで音楽を聴いていたりして。
それに比べると、日本の選手は入念に準備します。
私もそうで、腰を温めるためにVenom 2 Backを巻きつけて
ロッカールームをうろうろしていることが多い。
その姿が珍しいのか、とある選手には笑われたことも。
でも、これにはちゃんと意味あるのよって(笑)」

「うまくいかなくて、修正して。上達を感じるのが楽しい」

現在、マンチェスター・シティWFCには5名の日本人選手が所属しています。
最も所属歴が長い長谷川選手を中心に、切磋琢磨の毎日。
時折り流れてくるクラブの映像からは、仲のいい様子が伺えます。

「年齢は上から二番目ですし、私がお姉さんキャラというわけじゃありません。
相談があれば、簡単にアドバイスするくらいですね。
でも、普段からみんなで集まってご飯を食べたりして。
仲良くしてもらっています」

ご飯といえば、イギリスでの食生活についても。
食が身体作りの基礎となるなかで、
どんなふうに食事をとっているのでしょう。

「毎日自炊しています。基本的に和食ですね。
そもそも、『イギリス料理って何?』って思っていて。
外食で『野菜のグリル』を注文することもありますが、
そんなに“レシピらしいレシピ”はないのかなって思っています。
チームメイトは『ジャパニーズ大好き』とか言って、
ちょっと変わったお寿司を食べてたりしていますよ。
そういえば、昨シーズン末にひとりのスペイン人選手がお別れのタイミングで、
自宅に招いて日本食をご馳走しました。
お返しに、相手はチーズケーキを作ってくれたんです。
彼女は箸も上手に使えて、すごく美味しいと言ってくれました」

最後に、今サッカー以外で一番興味あることは?
と水を向けると、こんな回答が。

「この2年ほど、ゴルフをちょっとかじっています。
兄が上手で、誘ってもらったのがきっかけです。
なかなか思い通りにいかないけれど、
自分なりに打ち方を修正してうまく飛んだりすると楽しいですね。
スコアはまだ120前後ですが、やればやるほど上達する感覚があって。
とはいえ限られたオフは普段会えない人と会ったりもしたいから、
ゴルフばっかりにはなれないなと思います」

持ち前の向上心と好奇心を、遊びのシーンでもちらりと覗かせて。
幼くしてサッカーに巡り合った少女は、
心身ともに成長した今も、全力で運命のスポーツに打ち込んでいるのです。


YUI HASEGAWA

1997年埼玉県出身。
2013年当時に飛び級でなでしこリーグの公式戦に出場するなど早くから注目を集め、
2014年のU-17女子ワールドカップではチームの優勝に貢献。
2017年には日テレ・ベレーザで三連覇を成し遂げ、
以降4シーズン連続でベストイレブンに選出された。
海外へと活躍の場を移した2021-22シーズンからも、順調にステップアップを重ねる。
昨季はマンチェスター・シティWFCでの3シーズン目を戦い抜き、
2年連続となる全試合出場を達成。
クラブの年間最優秀選手にも選ばれている。

  • Photo:Atsutomo Hino
  • Text:Naoki Masuyama
  • Edit:Toshiki Ebe(ebeWork)

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